足の健康にも大きくかかわる骨密度。皆さんは測ったことがありますか?
骨密度の低下は骨粗しょう症にもつながり、骨折のリスクが上がることで知られています。しかし低下しても自覚症状がないために、潜在的な患者数の増加などが懸念されているのです。
骨密度は加齢に伴って低下するため、急に上げるのは難しいものですが、早いうちから生活習慣に気を付けて対策すれば、低下を緩やかにしたり上げたりする効果が期待できます。
本記事では、骨密度が低下すると起こる影響、低下する原因、上げるために押さえたいポイントについて紹介します。
普段の生活を少しずつ見直して、元気に過ごすためにお役立てください。
骨密度とは
骨密度とは、骨の中にカルシウムやミネラルなどが、どのくらいの密度で入っているのかをあらわす値です。骨の強さと関係があり、骨粗しょう症の診断基準としても用いられます。
骨密度は、低くても自覚症状がほとんどありません。気づかないうちに骨折のリスクが高くなり、骨折してはじめて発見されることもあるのです。
骨密が低下すると起こる影響は?
骨密度や骨質が低下すると、骨粗しょう症のリスクが高まります。
日本における骨粗しょう症患者は約1300万人だといわれていて、大腿骨(ふとももの骨)で調べると50代女性の5人に1人、70代女性の2人に1人の割合で症状を認めたとの報告がありました。
骨粗しょう症になると骨全体がもろくなり、ちょっとしたことで骨折しやすくなります。一度骨折すると、思うように動けないために、日常生活の質が低下する懸念があるのです。
骨粗しょう症に伴う骨折でよくある大腿骨骨折では、長期間ベッドに寝たきりになる影響によって、高齢の方では術後6ヶ月以内に死亡する確率が6%、1年以内が10%とも報告されています。
骨折する前に、骨密度の低下に対して備えるのが重要だといえるでしょう。
(参照:仙台医療センター医学雑誌「大腿骨近位部骨折の治療の現状」)
骨密度が低下するリスクはなにがある?
骨は大人になっても新しく作られることをご存じですか。
骨では古い骨が壊される「骨吸収」と、新しい骨を作る「骨形成」が繰り返されています。骨吸収のスピードが骨形成を上回ると、骨密度が低下すると考えられます。
骨密度が低下する原因は以下の通りです。
骨粗しょう症の危険因子
除去できない危険因子
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除去できる危険因子 |
・加齢 ・性(女性) ・人種 ・家族歴 ・遅い初潮 ・早期閉経 ・過去の骨折 |
・カルシウム不足・ビタミンD不足 ・ビタミンK不足 ・リンの過剰摂取 ・食塩の過剰摂取 ・極端な食事制限(ダイエット) ・運動不足 ・日照不足 ・喫煙 ・過度の飲酒 ・多量のコーヒー |
(引用:e-ヘルスネット(厚生労働省)「骨粗鬆症の予防のための食生活 」)
骨密度低下に対する、取り除けないリスクとして代表的なのが、加齢や女性であることです。加齢と骨密度の関係を示したグラフをご覧ください。骨密度は20歳前後が最大で、その後は男女ともに加齢に伴って減少します。
(引用:日本老年医学会学術集会記録「ヒトは骨と共に老いる」)
さらに、女性では50歳以降に顕著に下降しています。この急激な下降に関係するのが、骨吸収を緩やかにする働きをもつ「女性ホルモン(エストロゲン)」の分泌量です。閉経してエストロゲンの分泌が低下すると、骨吸収の速度が一気に速まり、骨密度が低下するのです。
一方、取り除けるリスクとしては、食事や生活習慣があります。中でも意外と見過ごされがちなのが、極端なダイエットです。
骨が成長する若い時期に激しい食事制限をすると、骨量の十分な貯金ができず、加齢による少しの低下でも骨がもろくなってしまうのです。
骨密度の低下は、閉経前の生理不順になる頃から少しずつ進みます。そのため、40歳を超えた女性では定期的な骨密度検査が推奨されています。
40歳以上では自治体による検診が受けられるところも多いため、確認しておきましょう。
検査方法
骨密度の検査方法について紹介します。検査の代表的なものを表に示しました。
骨密度検査名
|
検査の特徴 |
DXA法 | 2種類のレントゲンを使用して全身の骨を測定する。 腰椎や大腿骨の骨密度を測定することが多い。 |
MD法 | X腺で手の骨を測定する。診療所などでも測定可能。 |
超音波法 | かかとやすねの骨などに超音波をあてて測定する。妊娠中でも可能。 骨粗しょう症のスクリーニングとして用いることができるが、診断には使用できない。 |
(参考:骨粗しょう症(骨粗鬆症)ホームページ「骨粗しょう症の検査と診断」)
検査によって被ばくの有無、簡便さなどが異なるので、どの検査が良いのか迷う場合には、健診センターなどにご相談ください。
なお、2021年に骨粗しょう症検診を受診した割合の全国平均は5.3%でした。骨粗しょう症予防のためにも今後の普及が期待されています。
骨密度が上がるために気をつけたい
3つのポイント
ここからは骨密度が上がるために心がけたい、3つのポイントについて解説します。どれか1つに偏って対策しても、十分な効果が期待できません。
3つのポイントを押さえて、効果的に骨密度のアップを目指しましょう。
食事
食事では、骨の形成に必要な栄養素をしっかり摂るのが大切です。代表的なものに、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKが挙げられます。1つずつ見ていきましょう。
カルシウムをしっかり摂る
新しい骨が作られるためには、骨の成分であるカルシウムの十分な摂取が重要です。カルシウムの摂取が不足した状態が続くと、骨がうまく作られずに骨密度が低下するリスクが高まります。
2019年のカルシウム摂取量に関する調査結果をご覧ください。該当する年代の推奨量(ほとんどの人にとって十分な量)も記載しました。
男性 |
女性 |
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平均摂取量 |
推奨量 |
平均摂取量 |
推奨量 |
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20歳以上 |
503mg |
700~800mg |
494mg |
600~650mg |
75歳以上 |
561mg |
700mg |
525mg |
600mg |
(参考:国立健康・栄養研究所「国民健康・栄養調査」と「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」のデータから抜粋して表を作成)
男性、女性ともに摂取推奨量に比べて実際の摂取量が少ないこと、若い年代の方が不足していることがわかります。
若いうちには骨密度の低下が問題にならなくても、慢性的なカルシウム不足によって徐々に低下が進む可能性があります。意識して摂取するよう心がけましょう。
カルシウム摂取量が多い食品には、牛乳、豆腐、骨ごと食べられる小魚、ひじきなどの海藻類、小松菜などがあります。毎日牛乳を飲む、魚のふりかけを常備するなど、意識して摂取できるとよいでしょう。
(参照:「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」)
カルシウムの吸収を助けるビタミンDとビタミンKも大切
カルシウムと一緒に、ビタミンDやビタミンKを摂るのも重要です。
骨密度は、カルシウムだけをたくさん摂取しても上がりません。なぜなら摂取したカルシウムを体に吸収したり、骨に定着させるためには、ビタミンDやビタミンKなどが必要だからです。
ビタミンDやビタミンKを多く含む食品を紹介します。
- ビタミンDを多く含む食品例……魚介類、キノコ、卵黄など
- ビタミンKを多く含む食品例……納豆、キャベツ、小松菜、海苔など
骨ごと食べられる小魚などは、ビタミンDとカルシウムが一緒に摂れる理想的な食材です。毎日魚を調理するのが大変であれば、魚のだしや粉末、缶詰、加工品などをうまく活用しましょう。
このほかにも骨を強くするためには、たんぱく質やビタミンB、マグネシウムなども大切とされています。
1日3回、バランスのとれた食事(主食、副菜、主菜のそろった食事)を心がけて、栄養の偏りや不足を防ぐのが大切です。
(参考:e-ヘルスネット(厚生労働省)「骨粗鬆症の予防のための食生活 」)
運動
栄養の摂取と同じくらい重要なのが運動です。骨密度が上がるためには、運動の中でも骨への刺激がある「抗重力運動」が効果的です。
宇宙飛行士が無重力の宇宙に行くと、骨密度が急速に低下することをご存じですか。骨を強くするためには、重力の刺激が大切なのです。
骨を刺激する運動には、ウォーキングや筋力運動、ミニジャンプ、ジョギングなどがあります。
「ハードな運動がつらい……」という方は「かかと落とし」はいかがでしょうか。
かかと落としは、かかとを上げてつま先立ちになった後に、かかとをストンと落として床に打ち付ける運動です。自宅の狭い場所でも、家事をしながらでも行えるので、気軽に継続しやすいでしょう。
急に無理な運動をして「ケガや骨折をしてしまった…」とならないように、負担の少ない運動から少しずつ始めることをおすすめします。
(参照:厚生労働省|転倒・腰痛予防!「いきいき健康体操 11 骨太踵落とし」)
日に当たる
3つ目のポイントは、日に当たることです。
カルシウムの吸収を助けるビタミンDは、食事から摂る以外にも紫外線を浴びると体内で作られます。日焼けしすぎは皮膚に良くありませんが、適度な日光浴は骨にとって良いといえるでしょう。
骨密度が上がるために
バランスの良い食事や運動を心がけよう
骨密度検査は健康診断に含まれないことが多く、計測した経験がない方が多いかもしれません。しかし骨密度は気づかないうちに低下して、骨折のリスクが上がります。
閉経前後の女性では骨密度の急な低下が起こるため、40歳以降は定期的にチェックして、若いうちから骨密度が上がる生活を心がけるのが大切です。
「食事」「運動」「日光に当たる」の3つを意識して、骨に良い生活を目指しましょう。
食事では魚のだしや缶詰、加工品などを賢く利用し、無理のない範囲で栄養バランスを見直すようにされてみてください。